白鳥の王子
魔法が解けても、翼になった腕は元に戻りません。
変わってしまうことは悲しいけれど、王子様の翼はとても美しいのです。
白鳥の翼は広げるとすごく長いので、いつもより大きな24cmほどのお人形になりました。

悲しい顔のお人形を作ることを避けたいと思ってきたけれど、
ほほえんだお人形のほうがいいかなと思ってきたけれど、
個人的には「悲しい時でも笑って・・・」などとはちっとも思っていない。
むしろ、悲しい時はおもいきり悲しんだ方がいいと思っている。
嵐が過ぎた時には、悲しみはすこし減っている。
悲しみが完全になくなることはないけれど、意外と大丈夫にはなったりする。
そう考えると、悲しいお人形が誰かを癒すこともあるかも、、
最近ちょっとそう思うようになってきました。
せめて、とても美しい王子様にしてあげたいなと思ったので、
おフランスの素敵な素材たちを使ってみました。
袖に使ったのは、ビロードとシースルーの生地が段染めになったリボン。
つややかでとても柔らかな素材で、写真で見るよりも本当に綺麗です。
腰のリボンもメタリックな珍しい素材で、光が当たると、こまやかにきらきら光ります。
湖のように透き通った深いブルーの「めのう」の台座をつけました。
この秋は、色々と生活に変化があったこともあり、
まことに残念ではありますが、ドールワールドに出るのを見送りました。
実物を見ていただけるのは、もう少し先になりますが、
とても実物を見てほしいお人形になりました。
最近は、お人形の横顔がなんだか好きなので、もう一枚(笑)
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猛獣使い
と、思ったことさえ忘れていました。
ただでさえ怠け者なのだから、
色々やらずにインスタだけでいいじゃないかと思ったのです。
何度もそう思ってみては決めきれず、
ブログを書いたり書かなかったりするのは何故だろう。
未だにSNSになじめないからなのだろうか。
テンポの遅いアナログ人間なので、
本当にデジタルだとか情報の流れの速さとかついていけません(泣)
今年の年賀状用に作ったのは、虎使いの女の子。
2022年も、もう半分近く過ぎてしまったなんて早すぎる。
この子のように、2022年を自分の手の中でうまくこなしていきたかったけれど、
私はパペットのトラちゃんのほう。糸がこんがらがってます(笑)
チュニックみたいな衣装は、二種類の布地を青と緑に染めてグラデーションを作りました。
軽やかに透き通ったのゴールドのリボンを、グレーの革靴に縫い付けました。
襟元やスカートのアンダーにも同じ素材を使ってみたけど、
フェルトにもこういうシースルー素材が結構合うんだな。
今年の後半は、炎を素手で持つくらいの勢いでいけたらいいな、と切に思う。
トラちゃんは心なしか不安そう(笑)
ドールワールドで見てくださいな。
メイド
前から一回作ってみたいような気がしていました。
メイドの衣装を調べてみると、コスプレもイラストも衣装デザインの膨大なこと(笑)
やっぱりよくわからないけど、それだけ魅力があるのでしょう。
メイドコスプレで知った情報からすると、
この子の衣装はクラシックタイプ。
羊毛でお姫様とか王子様とか作っていますが、
自分がおとぎ話の中に入れるとしたら、
お姫様よりも、何かしらの職業があるほうがいいな。
ドレスを縫う仕立て屋とか、靴職人とか、メイドや執事とか。
おとぎ話のなかですらお姫様願望がないなんて、夢がないでしょうか(笑)
お庭のティータイムのお姫様やお嬢様にココアを運んでいます。
歩く姿もキビキビと、働き者なのは間違いなしです!
きっと、あなたにも熱々のココアを運んでくれると思います。
ほんの2〜3滴くらいですが(笑)
両手で水平に物を持って運ぶ。
人形にはけっこう難しいポーズです。
メイドさんといえばこの髪飾り!
クラシックにチャコールグレーの衣装なので、足元はすこしオシャレにしてみました。
写真では分かりにくいけど、髪がオレンジ色と紫色のグラデーションで本当に絶妙な色合いなので、
足元はその中間のエンジっぽい色にと思ってシルクを染めました。
あんまり濃くない暗めのピンクの発色だけど、却ってかわいい感じが出たかもしれません。
マイブームのパフスリーブと絞った袖口には、パールグレーの極小ビーズを縫い付けてあります。
そして、ほんの少しのココア(笑)
お茶にしませんか?
この子もドールワールドに連れていきます。
モモ
ミヒャエル・エンデのモモをつくりました。
子供の頃に途中で放り出してしまっていた本でしたが、もっと早く読むべきでした。
でも、その頃に読み切っていても、大事な部分を理解できなかっただろうと思います。
だって、アリの行列を日がな一日眺めたり、だれが一番どろ団子を硬く作れるかを競ったり(笑)
ムダなことに時間をたっぷり使って生きていたし、似たような幼馴染もたくさんいて、
自営業の親の職場にいくらでも入り浸っていられた子供時代でした。
作者のあとがきに、この話は将来おこることとしてお話ししてもよかったんですよ。
と書かれていてすこしゾッとしました。
大人になった今、仕事に家事に子育てにと忙しいのが普通になって、
そうやって忙しく働いているのが社会で活躍することで、一億総活躍社会だというのですから、
羊毛フェルトなんて非効率な手芸をしている自分のことを思うと、
自分はなんて非生産的な人間なのだろう、などと考えたりすることもありました。
3Dプリンターで立体物も簡単に作れる時代なのに、、、と。
でも、いま作ろうとしている子を空想する。
どんな子なんだろう?どんな靴を履かせてあげようかな、洋服はどんな感じ?
羊毛に触れながら、空想の中のお人形を手の中で形にしていく。
そのことに夢中になっていると、時間はあっという間でたのしい。
いつまでに何体作らなきゃなんて考え出すと、それは急に苦しいものに変わってしまうし、
こんなので誰かに喜んでもらえるだろうかと考えると不安になる。
楽しかったはずのことが苦行になって、つまらないものに変わってしまう。
お話し好きだったはずのジジが、どんどん話すのに苦しみ出すくだりはとてもリアルで
読んでいて苦しくなりました。
ひとあしーひと呼吸ーひと掃き、
ゆっくりと少しずつすすむ道路掃除夫のベッポの掃除のように、
ただただ人形とゆっくり対話しながら作っていられる時には、迷いが消える。
そんなふうに人形を作っていきたいし、生活していきたい。
ー けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。
そして人のいのちは心を住みかとしているのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。 ー
忙しさから逃れるのは難しい世の中だけれども、効率性に笑顔を奪われませんように。
羊毛で作ったジャケットにはざっくりとしたコットン(ジュートかも)の織物のポケット。
時間がテーマの物語なので、時計の歯車のようなボタンを付けました。
「ありとあらゆる色のつぎきれを縫い合わせて作った」というスカートは、
備後絣(びんごかすり)のハギレをスカートの形になるよう無理やり縫い合わせて作りました。
ちょっとダーニング刺繍っぽく、いろんな色のステッチを入れてあります。
裸足のお人形は作るのが難しい(汗)
モモは生まれてから一度も櫛を入れたことがない髪なのだそう!!
カード機ですいて紡いだ毛糸で作ってる場合じゃないので、
刈り取った羊毛を洗っただけのスカードウールを染めて髪にしました。
結構、ナチュラルでかわいいなと思うのですがどうでしょう?
亀のカシオペイアもいたらよかったね。
しかし、亀に導かれて異世界に行くモモ。
帰ってきたら一日が一年経ってたよって、
日本人からすれば岡山の吉備団子の方なのですが!!
自由な木馬と王子様
コロナのステイホームはけっこう「普通のこと」であり、
特にストレスなことでもないと思っていました。
でも、2年以上が経過した今、じわじわと蝕まれていたのかもしれないと思い直してみたりします。
気づかないくらい少しずつ、ゆっくりとだったので気づいていなかったけれど。
コロナで苦しいニュースを見ると、あまり変わらない生活できている自分は恵まれているし、
自分がコロナのせいでどうのこうの言うのも違うなと思ったりしたけれど、
やっぱり、世界中の誰もがみんな少なからずダメージを受けているのだろうな。
ここしばらく、作品を作ってはやめて、、、というようなことが続いていて
迷いの時期なのかな? と思うのですが、紹介する作品はその中で生まれてきた子です。
木馬ですが歩けるし、走れます 笑
白い木馬は長い間ずっと、子供たちと一緒に遊んできました。
男の子も女の子も、元気な子も大人しい子も、
どんな子供とだって、白い木馬は仲良しでした。
子供たちと遊ぶのは大好きだったけれど、
ある日、木馬はふつうの馬になることにしました。
ぶらぶらお散歩したり、素敵な景色を見に行ったり。
たまには、子供たちを訪ねていくのもいいかもしれません。
今は気の向くまま、自由な木馬なのです。
黄緑に染めて、銀色の箔押しがされた本革を鞍(くら)に貼り込みました。
サドルクロスにはアンティークのスパンコールとウッドビーズを縫い付けてあります。
ぐるっと体に巻いた飾りもアンティークのフリンジを使っています。
ずっと長い間愛されてきたアンティークの木馬さんが表現できていたらいいな。
ピンクの馬銜(はみ)がアクセント。
尻尾やタテガミに使ったベージュ〜白の毛糸は、一部を少しピンクに染めて可愛らしく。
こちらは仲良しの王子様。冠もないのでただのお坊ちゃんという噂もあります笑
大きなパフスリーブとカフスに並んだ小さなボタンはマイブームです。
お馬さんとお揃いの生地は変わった織物で縫いにくいことこの上なかった。。
小さくてかわいい足にはグリーンの革にゴールドの顔料を塗布して、ちょっとゴージャズに。
二人の仲良しぶりはドールワールドでご覧いたけます。